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[おすすめ]畠山直哉写真展 まっぷたつの風景

会場:2016年11月3日(木)〜2017年1月8日(日)
会期:せんだいメディアテーク
評者:佐々木悠介
寸評: この展覧会は、旧作の風景写真(前半)と、震災以後撮り続けてきた故郷陸前高田の写真(後半)を組み合わせた大規模な企画展です。

 ここでは後半の感想だけに留めたいと思うのですが、畠山直哉の震災写真は、決して「震災の記憶」とか「復興の記録」といった陳腐なクリシェに回収できないものでした。
 壁に展示された作品の他にコンタクトシートが時系列に展示され、写真家が震災ですべてが失われた故郷の風景といかに向き合ってきたのかということが、緊張感をもって伝わってくる仕掛けになっています。
 震災直後から故郷を撮り続けていく過程で、写真家は次第にその瓦礫の中に、散乱した市役所の資料の中に、あるいは津波で土台だけになった建物の残骸にすら、画面を構成するリズムを見出していきます。それはちょうど、畠山が90年代後半に撮った「光のマケット」というシリーズ(今回の展覧会では前半の最後に置かれていました)の、白黒写真で捉えた都市の灯りが画面の中で構成していた、あの調性とリズム感に通じるものがあります。そして、何もなくなった故郷の写真を五年半にわたって撮り続けながらそうした画面のリズムを取り戻していく営みこそが、写真家にとって震災で負った傷を癒すことに他ならなかったのではないか、という気がします。
 震災で住む場所も食べる場所もなくなった時に、文化や芸術なんて何の役に立つんだ、そんなものは二の次だろう、という見方もあるのかもしれません。しかし絶望的な状況の中で、それでもフレームの中にリズムをもたらしていく写真家畠山の眼こそはまさしく文化の営みであり、そしてやはり文化がなければ人間は生きていけないのだということが、この展覧会を観て私が強く感じたことでした。

 なお、今回の展覧会に際して図録は刊行されていませんが、何らかに展覧会を記録した書籍を出す予定であるとのことです。また畠山直哉の陸前高田の写真はすでに写真集に入っているものもありますが、私見ではLight Motiv刊の洋書(『RIKUZEN TAKATA』)が、「のど」を跨いで掲載されている図版が少なくて良いかもしれません。 


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