東大比較文学會
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『比較文學研究』第94号

『比較文學研究』第94号(特輯:日本への視線)が、2010年1月に
刊行されました。
定価は3,800円(税別)です。

以下は『比較文學研究』第94号の「編輯後記」です。


◎ 本号の特輯は「日本への視線」とし、前号に続いて、東大比較文學
會の中堅会員に原稿を依頼した。「日本」を見る様々な視線を考える
ことは、日本における比較文学研究の大きな課題だからである。
◎ 大東和重論文は、長年の郁達夫研究に基づいた手堅い書誌的
探求を通じて、日本文壇の動きを中国側から照射した。劉岸偉氏も、
多年にわたる周作人研究のなかから興味深い主題を取りだしている。
張偉雄論文は、桜花を手がかりに黄遵憲の日本観を論じ、中国関係の
論考が三編並ぶ格好になった。一方、藤田みどり氏からは、昭和初期
の日本を訪れたエチオピア使節の動向を、資料を博捜して再現した
貴重な論考が寄せられた。
◎ 本号には、投稿論文が三編集まった。いずれも、編輯委員による
査読と、若干の改稿とを経て掲載に至ったものである。柴田真希都
論文は、戦時下の矢内原忠雄の活動という興味深い主題と格闘して
いる。矢内原は初代教養学部長として駒場に縁の深い人物であるが、
本誌に本格的な論考が載るのは初めてのことであろう。範麗雅論文は、
イギリス知識人の中国理解をめぐって、これも資料を博捜し、ウェイリー
研究に別の角度から光をあてた。いずれも博士論文を視野に入れた
研究であると聞く。一方、鈴木淳子氏は平成九年度に「リヒャルト・
ヴァーグナーの『未来の芸術作品』と反ユダヤ主義」と題した論文で、
既に博士号を授与されている。本号の論文は、その成果に拠るもの
だが、ヴァーグナーの「ユダヤ人」観をめぐる刺戟的な議論だけに、
音楽研究の分野から反響があることを期待する。今後も会員からの
投稿による誌面の充実を図りたい。
◎ 本号には論文を七編掲載したため、書評欄がやや手薄になった。
会員の著書等、紹介・論及すべき本は数多くある。次号以降、順次
取り上げるつもりである。書評の投稿も歓迎する。また、「ロン・ポワン」
欄にも話題を提供していただきたい。
◎ 平成十七年三月に急逝した大澤吉博教授の遺稿集発刊の準備が
整いつつある。編輯に際しては思わぬ時間を要したが、これには東大
比較文學會の有志が関わった。書名とした『言語のあいだを読む』には、
大澤教授の遺志と、比較文学研究の初志が現われていると信ずる。
◎ 年末にうれしい知らせが届いた。本會会員の川本皓嗣氏が学士会
会員となられたとの報道である。人文学の分野で、比較文学研究が
改めて注目を集めるのは、斯学のために大いに悦ばしい。後進への
刺戟となることを期待したい。
(菅原克也)