東大比較文学會
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『比較文學研究』第97号

『比較文學研究』第97号(特輯:世界文学と国民文学)が、2012年10月に
刊行されました。
定価は3,800円(税別)です。

以下は『比較文學研究』第97号の「編輯後記」です。


編輯後記
◎ カノン、脱カノンの命題に取って代わるようにして、わが国で世界文学なる
概念があらためて持て囃されるようになったのは、カサノヴァ『世界文学空間
――文学資本と文学革命』、スピヴァク『ある学問の死――惑星思考の比較文学へ』
などの邦訳が刊行された今世紀初めあたりからだろうか。池澤夏樹個人編集
『世界文学全集』の影響も大きかったに相違ない。世界文学とはカノンではなく
「読みのモード」の問題に他ならないことを明快に打ち出したダムロッシュ
『世界文学とは何か?』の邦訳も、先年、刊行された。
◎ 世界文学概念において、「世界」という場は「文学」にいかに能動的に
関わるのか。世界文学概念は一個の文学作品の、相互理解の可能性と不可能性、
あるいは翻訳可能性と不可能性とを、いかに識別し、どう切り分けて、「比較」の
対象として提示してくれるのか。いずれも比較文学比較文化研究にとって避けては
通れない問い掛けである。今号で世界文学の特輯を組んでみた背景にはそんな
思いがあった。
◎ 実は今回の特輯には、あと数点の論文掲載を予定していた。まずは、
カサノヴァ、ダムロッシュなど、有力な世界文学論者の主張を批判的に整理して
おくべきだろうし、世界文学とはほぼ翻訳文学と同義でもあるのだから、翻訳
研究・翻訳文学研究の内に世界文学研究を位置づける作業も欠かせない。わが
国における「国文学」成立過程に、世界文学概念がどう作用したのかも、明らかに
しておく必要があるだろう。今回の特輯はその意味で、近い将来組まれるはずの、
さらなる世界文学特輯の第一弾であるとお考え頂きたい。
◎ 今号の刊行がここまで大幅に遅れたのは、ひとえに、編輯担当だった私の
怠慢であり責任である。早々に原稿をお寄せ頂きながらさんざんお待たせする
こととなった執筆者各位に、そして何よりも、東大比較文學會の活動を日頃より
支えて下さっている会員諸氏に、衷心よりお詫び申し上げたい。
◎ 『比較文學研究』、東大比較文學會の今後の道のりは、様々な点において、
必ずしも平坦でないことが予想される。もちろんそれは東京大学のみならず、
昨今の大学の置かれた状況に起因するところが大きい。そういう時代だからこそ、
比較文学比較文化というディシプリンを旗印に、総会や企画に参加し、学会誌に
進んで論をお寄せ頂くなどして、東大比較文學會の活動を盛り上げて頂きたい
ものである。最後に声を大にしてそう言っておきたい。(井上 健)