東大比較文学會
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『比較文學研究』第99号

『比較文學研究』第99号(特輯:外地を語る, 外地から語る)が、2014年8月に
刊行されました。
定価は3,800円(税別)です。

以下は『比較文學研究』第99号の「編輯後記」です。

編輯後記
◎ 本号の編輯にあたっては、「外地」ということばを示して四名の会員に原稿を依頼した。歴史的語彙としての「外地」にどう向きあうか、どの地域を対象とするかは論者に任せた。これまでの文学的言説の潮流を意識しつつ、多少の距離を保つ議論を期待したつもりである。結果として三篇が「朝鮮」に関わる題材を選んでいるのは、現在の研究状況と蓄積を反映するのかもしれない。
◎ 西成彦氏は、多和田葉子を枕に、在日の作家李恢成を論じるなかで「母語」の問題に触れる。人それぞれの経験に根ざした「母語」をめぐる語りは、文学にこそ期待できるものだろう。西氏の言う「足し算されたバイリンガリズム」と「割り算されたバイリンガリズム」という対比は面白い。
◎ 水野達朗氏の論文は、韓国滞在中に着手された一連の研究をまとめたものである。篤実な論考として読んだ。須藤直人氏は、修士論文以来一貫して「南洋」に取り組んでいる。今回は、戦時中の漫画映画を素材に選んでいるが、初稿にあった多くの画像を、版権処理の関係で割愛せざるを得なかったのは残念である。李建志氏の論文は、李垠をはじめとする李王家の人々の歌会始への詠進という、興味深い主題の存在を指摘している。
◎ 西氏と水野氏は「外地」の語を慎重に避けているが、歴史的語彙に向きあうことで見えてくることもあるのではないか。「外地」ということば自体を吟味する議論もあってよかったと思う。
◎ 堀江秀史氏の論文は、編輯委員の査読を経て掲載した。一九六○~九〇年代という近い時代の日本映画が、歴史として、研究の対象として論じられることに驚きを覚える会員も多いはずである。こうした方向が比較文学研究の新しい領野を拓くことになるかどうか、議論もあろう。ただし丹念に資料にあたった、これも篤実な論文である。
◎ 今号には書評を三篇掲載した。対象となったのはいずれも大きな本である。広く会員に読まれることを願う。
◎ 長らく東大比較文學會の会長を務められた井上健氏が、平成二十五年三月を以て退職された。恒例にしたがい、今号には井上氏の業績を掲載する。氏は、翻訳研究を中心とする比較文学研究のかたわら、本会の組織運営の整備に力を奮われた。記して感謝の意を表したい。
◎ 『比較文學研究」は本号で九十九号をかぞえる。第百号と百一号では記念の特輯が組まれるはずである。(菅原克也)