東大比較文学會
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『比較文學研究』第104号

『比較文學研究』第104号(特輯:朝鮮からの視野:古代から近代まで)が、2018年11月に刊行されました。定価は3,800円(税別)です。
以下は『比較文學研究』第104号の「編輯後記」です。

◎ 特輯の「朝鮮」は、「日本」と同じく、日本で通用してきた地理上の概念とする。朝鮮の文学や文化への認識を深めることは、それ固有の意義を持つだけではない。古代以来の日本の文学や文化の探究において朝鮮との関係への目配りは不可欠であり、さらに東アジアの文学の様相と展開を見ようとする際にも、朝鮮に視点を据えることの有効性は示唆されてきた。つまりそれは比較文学の重要な課題でもある。本誌でも二十世紀以降については、とくに日本との関係においてしばしば論じられてきたが、本号では、その前提をなす古代から十九世紀までの期間に目を向け、朝鮮からの視野の具体化を試みた。残念ながら今回掲載に至らなかった論文もあるが、三氏からのご寄稿を以て特輯とした。
◎ 李芙鏞論文は、『源氏物語』に現れる唐楽、高麗楽といった舞楽に着目し、その特徴や背景から、物語での意味作用に新たな光を当てている。
◎ 趙恵蘭氏は朝鮮の中世文学の専門家であり、とくに寄稿をお願いした。日本で紹介されることの少ない高麗時代の文人学者李奎報の思想と文業とを生き生きと論じる。比較考察は含まないものの、政治と文学とに生きたその軌跡に、読者は日本の文人との対比に誘われるのではないだろうか。例えば「紅旗征戎吾が事に非ず」と記した藤原定家は同年に歿した同時代人である。
◎ 李禮安論文は、若き知識人兪吉濬が祖国の未来のため、明治日本の啓蒙書を養分としつつ新たなテキストを編み出す営為を追う。それは同時に福澤諭吉らによる明治日本の啓蒙の意味を問い直す試みになっている。
◎ 崔博光氏は巻頭言にて、特輯によせて、近世の朝鮮通信使を介した日朝の学者たちの交流の充実を活写して下さった。
◎ 松枝佳奈論文は、内田魯庵の同時代ロシア問題に対する積極的な言論活動とその意義とを明らかにし、魯庵研究の新たな地平を提示する。なお本論文は、編輯委員会の厳正な査読を経て掲載が決定した。
◎ 島田謹二記念学藝賞が最終回を迎えたことを機に、銓衡委員三氏による鼎談を掲載した。自由闊達に語られる受賞作の選評、全十五回の回顧の中に、比較文学研究の目指すもの、その方法に亘って、比較文学を志す者への真率な提言が溢れている。
◎ 「平成」時代の終わりに当たり、この語の正確な理解を追求し、経書研究や元号の問題にまで及ぶ古田島洋介氏の論考を掲載できたのは有難いことだった。
◎ 編輯上の事情により、本号の刊行が大幅に遅れたことを心からお詫び申し上げる。(徳盛誠)